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「安保関連法案」の強行採決に反対する中京大学有志の声明

  2015年7月16日に、安全保障法制に関わる法案が衆議院本会議で可決され、現在、参議院特別委員会で審議中です。私たち「安保関連法案」の強行採決に反対する中京大学有志は、本法案の衆議院での強行採決に強く抗議し、その廃案を求めます。

 

 

 そもそも、この安保関連法案は、憲法学者をはじめ、多くの専門家から憲法違反であると指摘されています。のみならず、多くの市民が、さまざまな見地から法案に反対する声を上げていました。にもかかわらず、法案は衆議院で強行採決されてしまいました。しかも、政府は十分な説明ができず、日を追って反対の声が高まっていくなかでの強行採決でした。これはまっとうな民主的手続きによる決定からかけ離れた代物です。

 

 

 また、「戦争法案」との指摘もあるように、海外で同盟国による軍事行動の後方支援をすることは戦闘に巻き込まれるおそれがあります。補給などの後方支援活動が紛争相手から攻撃を受けることは、軍事的には通常のことです。「専守防衛」をもっぱらとしてきた自衛隊の軍事装備が見直される可能性も否定できません。

 

 

 紛争を平和的に外交で解決する道を探るのが平和憲法の本来の姿だったはずです。あえて海外での武力紛争に関与する道を選ぶというのは、日本社会にとっても、市民にとっても、とても重大な決定です。ところが、いま、安保関連法案は国会審議だけで、憲法改正に問われることもなく、しかも衆議院の強行採決を経て、審議が進められています。こうしたやり方は、憲法9条への評価以前に、自由や民主、法治といった基本的人権をはじめとする憲法の根幹にある価値をないがしろにする暴挙というほかありません。

 

 

 従来、これら安保関連法案の基礎となる集団的自衛権の行使の容認は、歴代の政権による公権的憲法解釈においても不可能とされてきたものであり、憲法学者の大多数をはじめとする専門家も違憲であると指摘してきたものです。

 

 さらに、現政府ならびに与党が根拠とする砂川事件最高裁判決からは集団的自衛権の容認を導きだせないということも大多数の憲法学者をはじめとする専門家の一致した見解です。それどころか、いまでは米国国務省の公文書をつうじて最高裁判決以前に田中耕太郎最高裁長官(当時)が米国大使に判決内容の趣旨等をあらかじめ伝えていたことも明らかになっています。つまり、公正な裁判であったかすら疑わしいのです。

 

 

 しかし、政府ならびに与党は従来の見解やこうした指摘はおろか、憲法学者の存在自体すら軽んじてことを進めようとしています。ときの政権が恣意的に憲法の解釈を変えてよく、その結果として現実には憲法による制約を無視するのでは、憲法ひいては現代社会の根底にある法治や立憲の考え方さえ認めないものです。改正されるまでは憲法に誠実に従って行動することを大臣や国会議員などの公務員に要求する憲法尊重擁護義務(99条)にも違反します。学問の府に連なる者としては到底これを座視することはできません。

 

 

  そのうえ、甚大な影響を受ける人々の声に耳をかたむけようとしていない。これは立憲国家の本来あるべき姿ではありません。憲法は国家を制約して市民を守るためにあり、学問はときの政権のためにではなく毎日を生きる市民のためにあります。政府・与党の都合でどうなるものでもありません。どうしても必要だというのなら政府は憲法改正で国民に是非を問うべきです。

 

 私たちは、学問の府に連なる者として、安保関連法案が、現行の憲法を無視して、成立しかねないことに強い懸念を持ち、多くの方々とともに同法案ならびに、同法案の強行採決に反対を表明します。

 

 

 

2015年8月1日

中京大学有志

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